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タックスヘイブンの時代に終焉を:ピケティ氏らによる公開書簡

トマ・ピケティ氏、ジェフリー・サックス氏ら、タックスヘイブンへの対処を各国政府に呼びかけ
「格差を拡大させるタックスへイブンには、経済的正当性はない」

タックスヘイブンは格差を推し進めるものだとして、各国政府に国際協調と対策を求める公開書簡が発表されました。公開書簡は、40か国の政府と世界銀行や国際通貨基金(IMF)など国際機関の代表が出席する腐敗防止サミット(ロンドン:5月12日)の開催に先駆けて発表されました。同書簡は、タックスヘイブンに経済的な正当性はなく、租税回避を可能にする情報の不透明性に取り組むことが急務だと提言しています。

公開書簡に賛同した経済学者には、ベストセラー『21世紀の資本』を執筆したトマ・ピケティ教授、2015年のノーベル経済学賞受賞者であるプリンストン大学のアンガス・ディートン教授、トゥーレーン大学にてラテンアメリカ経済を研究するノラ・ラスティグ教授に加え、各国政府の政策顧問を務めるなど影響力を持つ専門家が名を連ね、コロンビア大学アース・インスティテュートのディレクターであり、潘基文国連事務総長のアドバイザーを務めるジェフリー・サックス氏やIMFの前主席エコノミストのオリビエ・ブランシャール氏も含まれています。ハーバード大学、オックスフォード大学、ソルボンヌ大学など、世界の名門大学に籍を置く教授らを筆頭に、フィンランドやカメルーンなど、30か国以上、300名以上の経済学者が公開書簡に賛同しています。

タックスヘイブンを野放しにすることにより、途上国はもちろんのこと、先進国も含めた各国政府の税収を得る機会は大きく損なわれています。署名した学者らは、望ましい税率などについては異なる見解があることを認めつつ、タックスヘイブンの存在がグローバル経済の秩序に悪影響を及ぼしているという点では一致した見解を示しています。

租税回避の課題に取り組むためには、企業が収益に相応する税金を納めているか明らかにすることを目的に、すべての企業に対して国別の財務報告書の作成と開示を義務づける必要があります。またすべての国や地域は、各法人の実質的所有者を明確にし、課税対象者を特定するために情報を一元管理し、一般公開するための仕組みを作らなければなりません。こうした取り組みを実現するためには、国際協調が必要不可欠であり、公開書簡は、各国政府にグローバルな合意とルール作りを呼びかけています。

「タックスヘイブンは、ある日突然出現するものではありません。英領ヴァージン諸島は、自身の努力によってタックスヘイブンとなったわけでもありません。現在のタックスヘイブンは、イギリスや米国を筆頭とした主要国政府と主要な金融機関や会計・法律事務所のパートナーシップのもと、彼らの意図的な選択の結果として存在しているのです。

こうした不正が存在するという事実は、衝撃的でありながら周知の事実でもありました。たとえパナマ文書による告発がなかったとしても、タックスヘイブンを利用したグローバルな税腐敗が蔓延していることは一目瞭然です。不正を可能にするグローバルシステムに早急な対処を行うことが必要です。持続可能な開発に国際社会はコミットしており、グッド・ガバナンスとはまさにこうした不正をなくす仕組みを作り、導入していくことにあります。」

ジェフリー・サックス氏

イギリスは、世界のタックスヘイブンの3分の1がその海外領土や属領に含まれ、自らの政治的権限が及ぶ領域であることから、この問題に率先して取り組むべき立場にあります。パナマ文書の流出元であるモサック・フォンセカ法律事務所によって設立された企業の半数以上が、英領ヴァージン諸島などをはじめとした英海外領土において設立されたものです。

オックスファムが公開書簡への賛同を呼びかけた背景には、こうした取り組みには各国政府による国際協調が不可欠だという認識があります。一部のタックスヘイブンで規制が強化されても、金融資本は他のタックスヘイブンへ逃げることが可能です。グローバルな取り組みなくしてこの課題への有効な対処はあり得ません。

現在のグローバルタックスシステムでは、一部富裕層がその資産をタックスヘイブンに隠し、本来払うべき税金を払わずに済むことが許されています。こうした個人や企業が本来納めるべき税金を徴収できないことにより、各国政府は、医療保健や教育など、自国の市民へ向けた必須社会サービスの財源を失っていることになります。

オックスファムは、貧しい人々が自ら貧困から抜け出すための支援を行っています。一方で、人々が貧困から抜け出すためには、政府による公的な医療保健制度や教育制度の充実が重要な役割を果たします。国内外の貧困問題にしっかり取り組むためにも、タックスヘイブンへの対応は喫緊の課題なのです。こうした不正のツケを払わされるのは、各国の一般市民であり、世界の最も貧しい人々なのです。

各国政府をはじめ、国連、世界銀行、国際通貨基金(IMF)は、租税回避の課題について、現在の部分的かつ限定的な取り組みではなく、現行のグローバルタックスシステムを改革するためにしっかりと連携し、取り組む必要があります。


公開書簡

各国首脳の皆さま

今月ロンドンで開かれる腐敗防止サミットの場を活用して、私たちはタックスヘイブンの時代を終わりに導くための有意義かつ有効な議論を行ってくださるよう求めます。タックスヘイブンの存在は、世界の富や福祉の増進に何の貢献もせず、経済的に有益な役割を果たすものではありません。タックスヘイブンは、一部の富裕層や多国籍企業に利益をもたらしていますが、この利益は他者の損失の上に成り立っており、格差と不平等を助長する大きな要因となっています。

「パナマ文書」などによって明らかにされたように、タックスヘイブンに伴う情報の不透明性と秘密主義が、汚職や腐敗をあおり、国家が正当な税収を確保するための徴税能力を損なっています。タックスヘイブンを利用した税逃れ行為はすべての国の国益を損なっていますが、貧しい国々ほど相対的に大きな被害を受けており、少なくとも年に1700億ドルの税収入が失われています。

個人や法人の所得に対する直接あるいは間接的な課税のあり方について、私たち経済学者の間には様々な見解があります。しかしながら、活動実態のないペーパーカンパニーに利益を計上して資産を隠すことを許すタックスヘイブンの存在がグローバルな経済活動を歪めているという点において、私たちの見解は一致しています。不法行為を隠蔽し、富裕層と多国籍企業だけが利用できる特別なルールを設定することで、タックスヘイブンは、経済発展のために不可欠な要素である法の支配を脅かす存在となっているのです。

タックスヘイブンの秘密主義に切り込み、タックスヘイブンを含む各国が国別の報告書を公開すること等についての新たな国際的合意が必要です。各国政府もまた、自らの政治的権限が及ぶ領域内に存在するすべての企業や財団について、その活動から利益を得ている実質的所有者に関する情報を一般に開示するなどして、振る舞いを正さねばなりません。特に、世界のタックスヘイブンの三分の一を自らの管轄下に擁する英国は、今回の腐敗防止サミットの議長国でもあり、この問題についてリーダーシップを発揮しうる絶好の立場にあります。

タックスヘイブンに関する取り組みは容易ではありません。現状を堅持しようとする既得権益層など強大な抵抗勢力も存在します。しかし、「国富論」において「富める者はその収入の割合に応じて公共の費用を負担するのではなく、その割合以上の貢献をすべきである」と言ったのはアダム・スミスでした。タックスヘイブンの存在を容認し続けるのは、この文言を根底から覆すことであり、そこに経済学的な正当性はありません。

ケース・スタディ: マラウイの例

マラウイや他の貧しい国々では、医療や教育などの公共サービスへの資金供給を支えるべき税収が驚くべき速さで消失しています。アフリカ諸国は年間140億ドルにも上る税収を失っているものと推定されています。それだけの資金があれば、母子保健を提供して年間400万人の子どもの命を救えるだけでなく、十分な数の教員を雇用してアフリカ中の子どもが学校に通えるようにできるのです。マラウイにおける脱税や租税回避の全容を把握することは不可能です。しかしながら、昨年のスイス・リークス事件で明らかになったHSBCジュネーヴ支店の複数のマラウイ人名義口座に預金されていた資産に課税がなされていたら、その税収だけで年間800人分の看護師の給与を支払うことができるとオックスファムは試算しています。

マラウイの人口は約1600万人ですが、その半数が貧困の中に暮らしています。保健システムにおいては、医療従事者と重要な医薬品が不足しており、深刻な機能不全状態にあります。平均すると国民1万人あたりの看護師数は約3名にすぎません。初等教育学齢の子ども一人あたりの公共支出額は、世界最低の水準です。最近実施された政府予算削減は、民間診療所や私立学校の費用を払うことができない最貧層をさらに厳しく苦しい状況に追い込んでいます。

本件に関するお問い合わせ先
(特活)オックスファム・ジャパン(担当:森下) 
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カテゴリ:プレスリリース
タグ:格差、租税回避
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