オックスファムは、世界90カ国以上で貧困を克服しようとする人々を支援し、
貧困を生み出す状況を変えるために活動する国際協力団体です。

1月27日(土)開催:公開シンポジウム「日本の格差対策への提言~格差縮小コミットメント指数から見た世界の取り組みとの比較から~」

オックスファム・ジャパンは、 1月27日(土)、公開シンポジウム「日本の格差対策への提言~格差縮小コミットメント指数から見た世界の取り組みとの比較から~」を慶應義塾大学にて開催し、NPO、大学研究者、学生、政党、メディア、市民等の約50名が参加しました。このシンポジウムは、オックスファムが取り組んでいる世界の格差縮小に向けた活動の成果を共有する場として、昨年夏より準備してきたもので、特に昨年10月にオックスファムが発表した「格差コミットメント(CRI)指数の報告書を受けて、有識者を交え日本での格差対策についての議論を提起することを目的に開催しました。

また、世界経済フォーラム(ダボス会議)に合わせて、オックスファムは拡大する世界の所得格差に警鐘を鳴らす報告書を発表していますが、今年1月に発表した報告書は「資産ではなく労働に報酬を(Reward Work, Not Wealth」と題し、世界で昨年新たに生み出された富の82%を世界の最も豊かな1%が手にし、世界の貧しい半分の37億人が手にした富の割合は1%未満にすぎないことを指摘しています。

シンポジウムでは、森下麻衣子オックスファム・ジャパン・アドボカシーマネージャーより、CRI指数レポート要旨日本語版を参照しつつ、CRI指数の目的、限界、評価対象となる3つの政策分野(保健・教育といった財政支出、税制、労働政策)、ランキング分析、そして日本が世界全体で11位である旨の報告を行いました。(当日のPPT資料はこちらよりご覧いただけます)また、ダボス向けのレポート「資産ではなく労働に報酬を」でもテーマとなった労働面について、ベトナムの縫製工場の厳しい雇用環境で働く母親(出稼ぎ労働者)の実態を伝えるビデオを紹介しました。

世界の格差との関係を踏まえつつ、日本政府の取り組みをどう評価するのか。格差問題について積極的な提言を行っている、慶應大学経済学部の井手栄策教授に協力を依頼し、今回のシンポジウムに合わせてCRI指数を日本の文脈で分析するディスカッション・ペーパー「オックスファムのCRI指数に寄せて」を執筆いただき、基調講演にて発表いただきました。(当日のPPT資料はこちらよりご覧いただけます)

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井手教授の講演では、世界各国の政府の取り組みを指標で評価しようとするCRI指数の意義を認めつつも、日本については明らかに所得格差が拡大しており、政策も11位という順位も過大評価ではないかとの指摘がありました。CRI指数が評価対象とする制度があるかどうかという問題と格差の実態には大きな距離があり、指数としても例えばジニ係数は国際比較ができるのは良いものの、可処分所得から測るもので、例えば年金収入が高いと評価が高くなり、データ上過大評価になりやすい構造があるとの指摘がありました。日本の社会保障制度は、財政規模としては大きくなるかもしれないが、お年寄りの取り分が大きく、現役世代に回っていない中で、格差是正効果がどれだけあるのか等の分析がありました。また、井手教授からは重要な論点として、税と給付の結びつきは多様であり、それをどう評価するのかについての提起があり、例えばCRI指数は累進性を高く評価するが、ランキング総合1位となったスウェーデンは、税も給付も累進的になっていないのをどう考えるのか。この他、タックスヘイブンの問題が考慮されていないなど、CRI指数は多くの課題があるものの、今後も洗練化に向けた努力を継続することが重要であるとの見解がありました。

パネル・ディスカッションでは、議論の参考とするために、会場の参加者を対象にしたアンケート調査結果を共有しました。日本の格差対策については「不十分であり、積極的な対策が必要だ」との回答が91%をしめ、政策の優先度の高いものとしては「ジェンダーの観点からの支援の拡充」、「生活保護制度の拡充」、「最低賃金の引き上げ」等が挙げられました。

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パネリストで登壇した経済ジャーナリストの治部れんげ氏からは、特に労働とジェンダーの観点から具体的な事例をベースにコメントがありました。男女の賃金格差への問題意識から、例えば女性による無償ケア労働について、UNウィメンの統計では世界平均では女性が男性の2倍、途上国では5-6倍、日本では3倍となっており、先進国というより中進国に近いという指摘がありました。また、司法においても男女の賃金格差についてジェンダーバイアスが高いこと、日本社会にあるスティグマにより制度があっても十分使えない実態などについてコメントがありました。

同じくパネリストの大西連氏(特定非営利活動法人もやい理事長)は、現場での貧困者支援の活動経験を踏まえつつも、シングルマザーの貧困率が50%を超えていることなど、客観的データから国内の貧困状況を分析・紹介しました。また、スティグマについては「真に困った人」を支援するというが、これは何を意味するのか。子ども食堂に行った子どもが逆にいじめられて誰も来なくなるなど、価値観を変化させることの難しさを指摘しました。これについて、井手教授は困っている人を作らない社会を目指すべきで、様々な給付を大勢の人に提供していくこと、そして安心して生きていける社会になれば価値観は変わっていくはずだと述べました。

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また、会場の参加者からは、生活保護のフリーライドと政府の生活保護切り下げの問題、税負担のあり方をめぐる国民合意の形成、教育の現場における格差の取り上げ方など、格差をめぐる様々な論点が提起されました。オックスファムは、貧困のない公正な社会の実現という観点から、日本の経済とも密接に結びついている海外のサプライチェーンにおける労働・ジェンダー問題とのつながりにも留意しながら、今後も格差に関する活動に取り組んでいきます。

活動:調査提言(アドボカシー)
分野:格差・不平等
国: