オックスファムは、世界90カ国以上で貧困を克服しようとする人々を支援し、
貧困を生み出す状況を変えるために活動する国際協力団体です。

2018年格差報告書:ベトナムの現場から

オックスファムは、1月23日から25日までスイスで開催される世界経済フォーラム(通称ダボス会議)に先がけて、格差問題に関する最新の報告書「資産ではなく労働に報酬を(Reward Work, Not Wealth)」を発表しました。

最新報告書では、昨年、世界で新たに生み出された富の82%を世界の最も豊かな1%が手にしたことが明らかになりました。一方で、世界の貧しい半分の37億人が手にした富の割合は1%未満でした。

報告書の概要とプレスリリースは、こちらからご覧いただけます。

報告書では、現在の世界経済の仕組みが資産を保有する者を豊かにする一方で、何百万人もの人々が最低限の生活水準を維持することのできないレベルの賃金で厳しい生活を余儀なくされている現状に焦点を当てています。

オックスファムは、世界中の活動の現場で、格差に対峙する多くの女性労働者に耳を傾けてきました。今回は、ベトナムの工場で働くラン(32歳)を紹介します。

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ラン(32歳)と娘のハー(15ヶ月)、ホーチーミン市郊外ドンナイ省の自宅にて。
お母さんに会いたがるハーを見かねたランの母親が、バスで34時間かけて連れてきてくれて果たせた再会です。

ランは、ベトナム南部ドンナイ省の工場で働いています。工場は、グローバルなアパレル企業のために靴を作っています。この工場でランは、週6日、1日9時間以上働いています。靴底やヒールを靴本体にひたすら縫い付けていく仕事です。時給は120円程度です。1日で約1200足を縫い上げますが、1ヶ月働いてもその靴を息子に一足買うだけの賃金を手にすることができません。

ランは加えて2つの仕事を掛け持ちしています。洋服を仕立てる夜の仕事が週2回、工場がお休みの日曜日はレストランで働いています。これだけ働いても家族が生活するため十分な収入を得ることができません。家賃や食費を払えば、月末手元に残るお金はわずかしかありません。

ランは、結婚していますが、夫は病気がちで働くことができません。子どもは二人います。15ヶ月の娘と12歳の息子です。よい働き先を求めて遠くまできました。けれども工場周辺は家賃が高く、ランの収入では、子どもたちと一緒に住むことができません。タインホア省の実家に子どもたちを預け、両親に子どもたちを見てもらっています。実家とランが住む工場付近との距離は1500キロ。遠いだけでなく、交通費や休みを捻出することが難しく、実家に帰ることは滅多にできません。

s_110851scr.jpgラン(32歳)と息子のサン(12歳)、タインホア省の実家にて。
9ヶ月ぶりの再開となりました。


動画:ランへのインタビューの様子

「子どもたちと一緒に暮らせないのは苦しいです。子どもたちに申し訳ないと思います。子どもたちは、いつも一緒に暮らしたいといいますが、無理だと言い聞かせています。ここで一緒に暮らす金銭的な余裕がありません。特に息子は私と一緒に住み、勉強をしたいといいます。けれども子どもたちを食べさせ、学校に通わすだけのお金がありません。遠く離れているので辛いです。私も子どもたちと一緒に生活をしたいです。

子どもたちが飢えたり、他の子どもたちに劣っていると思ってしまうことは耐えられません。とはいっても、うちの子どもたちが他の子どもたちなみの生活をできているわけでもありません。たとえ私が飢えたとしても、子どもたちにだけはそのような思いをさせたくないのです。

交通費が本当に高いのです。いつも別れる時が一番辛いです。子どもたちは離れたくないといいます。実家に帰って子どもたちの顔を見ると、私も離れたくないし、ここに戻ってきたくないと思ってしまいます。

将来は、子どもたちと一緒に暮らし、子どもたちの面倒を見ながら、家の近くで安定した仕事に就きたいです。子どもたちにしっかりとした教育の機会を与えることができるだけの収入が欲しいです。子どもたちには、親の側でよりよい暮らしを与えたいです。」


* 名前は仮名です。職場での影響を考慮して、工場での様子や工場の詳細は公開していません。

<関連プログラム情報>
オックスファムは、ベトナムのドンナイ省にて、パートナー団体 Legal Aid Centre (LAC) を通じて様々な業界の労働者の労働条件・環境の改善に取り組んでいます。出稼ぎ労働者が直面する大きな課題として残業、低賃金、高い生活費などが挙げられます。多くの労働者が低賃金で長時間労働に従事することになりつつも、家族が生活していくための十分な収入を得ることができていません。LACは、労働者がこうした問題に取り組む際の支援やカウンセリングを実施しています。また、労働者が自身の法的権利を理解するための情報提供やトレイニングを行う他、必要に応じて裁判所を通じて労働者の権利を保護する活動を行っています。現在、オックスファムは、パートナー団体 Center for Development and Integration (CDI) を通じて、労働者の権利保護に関する支援活動を実施しています。LACとの共同事業は2010年から2014年にかけて行われ、現在は、2018年から2019年にかけての新たな支援プログラムを策定中です。

活動:調査提言(アドボカシー)
分野:格差・不平等
国: