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ATT国連準備委員会:「犠牲者支援」

会議3日目の3月2日午前の本会議は、条約に入れる可能性のある様々な項目のうち、国際協力・支援(international cooperation and assistance)の項目を主に議論しました。会議日程などの情報や関連文書は、「武器と市民社会」研究会のブログからアクセスいただけます。

< 今日もNGOは、朝8時台から本会議場の上の階のNGO用の部屋に集まり、情報を共有し、日程やNGOの主張を確認しました。途中からイギリスのダンカン大使と、彼の後任者が会議に参加し、イギリスの主張や会議の状況に関する印象を話し、NGOの質問を受けました。

今回の会議に向けて作成された、2月16日の議長インフォーマル・ペーパーの国際協力・支援セクションは、「Ⅰ.国際協力・支援」と「Ⅱ.犠牲者支援(victim assistance)」という二つのカテゴリーに分かれています。前者は、ATTを履行するために移転規制関連の法整備や実際の移転許可を行うにあたっての、情報・技術・物資・資金等の支援に関するものであり、後者は、「犠牲者」の支援に関するものです。このなかで最も論争が集中しているのは、後者の「犠牲者支援」です。これについては、ATT形成を推進してきたイギリスも、含めるべきでないと主張しています。

対人地雷禁止に関するオタワ条約や、クラスター弾禁止に関するオスロ条約の形成にあたっては、NGOは「犠牲者支援」にあたる文言を条約に含めることを求め、実際にこれら条約に含められています。ATT形成にあたっても、NGOは「犠牲者支援」にあたる文言を含めることを求めていますが、ATTという条約の性質はオタワ条約やオスロ条約とは異なるため、論争になっています。

オタワ条約やオスロ条約は、対人地雷やクラスター弾の性質そのものが非人道的であるとし、移転や保有等を禁止しました。この場合、これら兵器による「犠牲」が問題になり、支援する「犠牲者」が誰のことなのかが一定程度明確になります。これらに比べて、ATTは通常兵器全般を禁止するものではありません。ATTは、通常兵器全般の移転を規制・管理するにあたり、例えば、国際人権法の重大な違反に使われる可能性があるかどうかを検討し、そのような可能性がある場合は移転をしない、といった移転許可の際の共通基準を作ろうというものです。このような条約の場合、そもそも「犠牲者」とは一体誰なのか?という問題が出てきます。

ATTでの「犠牲者」とは、ATTの移転許可基準に照らして移転許可すべきでない場合(例えば、国際人権法の重大な侵害に使用される可能性がある場合など)に兵器が移転され、使用されて、何らかの犠牲を受けた人なのか?その場合、ATTに基づいた「犠牲者支援」として、どこかの国の「犠牲者」を支援することは、その犠牲を生んだ兵器が不適切に(例えば、国際人権法の重大な違反に)使われたと、支援ドナー国が判断したことを意味するのか?また同時に、その犠牲を生んだ兵器を、例えば数年前に他国が輸出した際の移転許可が不適切(ATT違反)であったと、支援ドナー国が判断したことを意味するのか?それとも、兵器の使われ方が適切かどうかや、そもそもの移転が適切なのかを問わずに、例えば武力紛争の影響を受けた人を「犠牲者」とするのか?武力紛争時以外で、警察による暴力や犯罪等で通常兵器が使われて犠牲を受けた人も「犠牲者」にするのか?そうした場合、例えば武力紛争の影響を受けた人への人道支援やその他の支援が既に実施されている現状で、ATTに「犠牲者支援」を挿入することで何かプラスになることがあるのか?こうした疑問が今回の会議中も指摘されているように、ATTにおける「犠牲者」をめぐる議論は、オタワ条約やオスロ条約に比べ、より複雑で困難な状況にあります。

午前の本会議での日本政府の発言でも、ATTの履行のための法整備等の「国際協力・支援」については重要であるが、「犠牲者支援」については因果関係を明確にすることが難しいため、注意深く考慮・検討する(carefully consider)必要があるとの見解が述べられました。このような日本政府の発言の他に、「犠牲者支援」を含むことへの疑念を表明した国々や、あるいは削除を求めた国々も見られます。NGOとしては、議長ペーパーの「犠牲者支援」の細かい表現についてコメントはあるものの、とりあえず次の議長ペーパー(下記)で削除しないことを第一に求めています。


2月16日の議長インフォーマル・ペーパーについての議論は今日で終わり、明日3月3日(木)朝までに次の議長ペーパーが用意されることになっています。明日の朝に議長ペーパーを入手し次第、NGOとしても即座に目を通し、NGOの反応や戦略を立て、午前・午後の本会議の前後にロビイ活動をしながら、今回の会議に関するNGOの最終プレスリリース等を団体間で合意し、各方面への送付準備をすることになります。今回の準備委員会は、論点が多岐に渡るのに対して、スケジュールが非常に詰まっており、NGOも、おそらく各国政府関係者も、毎日朝から深夜まで仕事をしています。

(ポリシー・オフィサー)

活動:調査提言(アドボカシー)
分野:武器貿易条約(ATT)
国: