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気候変動と食料問題:企業の責任と役割

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Photo: Tatiana Cardeal / Oxfam (July 2013)

オックスファムでは、報告書「気候変動を加速する食料生産?企業の責任と役割」(原題:Oxfam Briefing Paper "Feeding Climate Change")を発表しました。

食料生産と気候変動は、どのように関連しているのでしょうか。そして、食料・飲料企業は、温室効果ガスの削減にどのように取り組み、小規模農家の気候変動への適応を支援できるのでしょうか。パリ協定後の食料・飲料企業の責任と役割について考えます。

気候変動が及ぼす食料生産への影響
気候変動は、農業、そして世界の食料システムに対する脅威となっています。気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change / IPCC)の第5次評価報告書によれば、気候変動により、過去30年間で世界の農業生産の1~5%が減少しています。近年の異常気象は農業生産者に打撃を与え、世界的な食料の市場価格の脆弱性を加速させました。

例えば、ブラジルのマトグロッソ州は、2013年の時点で世界の大豆生産の10%を担っています。最新の調査書によれば、地球の気温が1℃上昇するだけで、大豆やトウモロコシの生産が9%~13%も減少する可能性が指摘されています。

厳しい立場に立たされる途上国の小規模農家
気候変動の影響を最も受けるのは、小規模農家(特に女性農家)であり、貧しい人々です。途上国の場合、防災のためのインフラや災害に見舞われた時の保険など、社会的な救済制度へのアクセスが不足していることがあげられます。農作物の生産量低下は、農家の収入低下に、自給自足型の生活を営んでいる場合には、食料生産量と消費量の低下につながります。食料価格の脆弱性は特に、小規模農家へ被害を与えます。オックスファムの調査によれば、農家が収入を失った場合、彼らは自らの資産を手放さざるを得なくなり、具体的には、家畜を売り、子どもを学校へ行かせることを止め、医療費も削るようになります。気候変動により、小規模農家は、自身の農業が打撃を受け、その将来へ投資する力を失うばかりでなく、食料、教育、医療保健といった安定した生活の基盤そのものが揺らぐのです。

また、女性農家は、特に気候変動の影響を受ける存在です。なぜなら、女性農家は、天水農業や、家事で使う水を集めるなど、より気候に左右されやすい生活を送っているからです。さらに、女性農家は、土地や農業知識など農業生産に関する資源へのアクセスが少なく、農業危機の際、支援を受けられる機会も少ないのです。

食料生産が気候変動を加速する
世界の食料システムそのものも、気候変動を引き起こす重要な要因です。食料の生産や輸送は、世界で排出されている温室効果ガスの4分の1を占めています(図1)。農業は、世界的な森林伐採と、温室効果ガス排出の主要因となっています(2005年時点で温室効果ガス排出量の56%を占めている)。例えば、メタンや亜酸化窒素などは、地球温暖化を加速させる、潜在性を含む高汚染物質です。これらは、家畜や牧草地に撒かれた肥料、合成化学肥料の使用、水田米耕作等によって排出されます。オックスファムの最新の調査(CE Delft)では、米、大豆、トウモロコシ、小麦の方が、温室効果ガスの排出量が従来高いとされてきたパーム油の育成よりも、深刻な温室効果ガス排出がなされることがわかりました。米にいたっては、パーム油の3倍もの温室効果ガスを排出する作物だと明らかになりました。アジアとオセアニア地域では、稲作に関わる土壌からの温室効果ガス排出が最も大きく、パーム油、トウモロコシ、小麦の生産に関わる土地利用変化による温室効果ガスの排出がそれに続きます。

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出展:オックスファム報告書 Standing on the Sidelines (2014)

食料・飲料企業は、これらの農作物生産と商品の流通で主要な役割を担い、また、小規模農家やサプライチェーンの農業従事者に依存しているので、気候変動に対処するため、重要な役割を担う明らかな責任があるのです。農業は、世界でも水を利用する主要分野です。アジアとオセアニア地域で、水不足を引き起こしている農作物は、米、小麦、そしてサトウキビです。責任ある企業は、農業従事者を支援する一方、気候変動に対する適応力を強化し、現地のコミュニティが水へアクセスできるようにする、水管理戦略を発展させる必要があります。また、食料・飲料企業は小規模女性農家への配慮や支援を丁寧に行う必要があります。私たちが口にする食べ物は、小規模農家によって生産され、その多数が女性にも関わらず、女性農家の存在や課題は見過ごされがちです。

オックスファムの取り組み事例(SRI)
2002年から、オックスファムは、小規模農家の利益となりながら、稲作による温室効果ガスの排出を削減するアプローチのひとつ、System of Rice Intensification(SRI)を推進し始めました。SRIは、小規模農家に対し、食料の安全や収入保証の改善を促し、かつ外的な援助に頼らず自立的な農業を行う為の教育にも貢献する、持続可能な農業アプローチ方法のひとつです。例えば南インドでは、SRIの利用により、通常の稲作と比較した際に、1キロあたり温室効果ガス排出が半数以下にもなりました。2013年時点で、カンボジア、スリランカ、ベトナムの150万以上の小自作農家が、オックスファムのパートナー団体の支援により、改良品種または地元米品種を使用しつつSRIの恩恵を受けています。

パリ協定を踏まえ、オックスファムは食料・飲料企業に以下二つの提言をします。
(1) バリューチェーンにおける温室効果ガスの排出量を、①測定、②公開、③削減すること。
(2) バリューチェーンにおける、小規模農家の災害に対するレジリエンス(強靭性:回復力や復元力)と生産性を強化するために投資すること。

世界の気温上昇を2度未満に抑えることがパリ協定で合意されました。科学的根拠に基づいて、気候変動に対する取り組みを実施していく必要があります。産業界と連携し、気候変動に対し建設的な関与を促すことも重要です。食料・飲料関連会社のみではなく、各々の関連企業分野において、気候変動に対し、積極的に行動を起こしていく姿勢が望まれます。

オックスファム報告書 「気候変動を加速する食料生産?企業の責任と役割」 本文(英語)
Oxfam Briefing Paper "Feeding Climate Change"

活動:調査提言(アドボカシー)
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