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アジア開発銀行年次総会:格差に関するセミナー

アジア開発銀行 第50回年次総会 
「拡大するアジアの富と所得の格差:アジア開発銀行の2030年戦略へ向けた市民社会からの提言」

オックスファムは、5月5日(金)、アジア開発銀行(ADB)の第50回年次総会にて、格差問題に関するパネルセッションを実施しました。パネルでは、拡大するアジアの格差の傾向を概観したのち、格差に関する課題についてADBが果たすべき役割について市民社会から提言がなされました。 8:30開始という時間設定にも関わらず会場は満員となり、多くの参加者から活発な質疑があったことからもこの問題についての関心の高さが伺えました。

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プログラム:
https://www.adb.org/annual-meeting/2017/events/addressing-rising-income-and-wealth-inequality-asia

最初に登壇した ADB戦略政策局次長木村知之氏は、 ADBのこれまでの取り組みを踏まえた上で、ADBの2030年戦略(策定へ向けてのコンサルテーションが現在進められています)では、格差と包摂性の課題にどのように対処していくかが重要だという認識を示しました。

格差拡大は社会不安を引き起こし、技術革新は可能性を拡大する一方で、雇用を脅かし、市場や社会を不安定化することが予見されます。こうした格差の課題への ADBの取り組みの可能性として提示されたのは、質の高い雇用の創出、インフラ整備、ジェンダー平等の推進、中所得国内における貧困ポケットもしくは取り残された地域への支援、社会そして金融の包摂性の確保(教育・保健などの必須社会サービスの充実やマイクロファイナンスなど)、税制度改革、気候変動へのレジリエンス強化などです。

また、2018年の採択を視野に策定プロセスが進められている2030年戦略については、市民社会を含む加盟各国のステークホルダーとの協議プロセスをすでに開始していること、今後ラウンドテーブルや年次総会でのインプット、さらなる協議を経て、2017年末には戦略のドラフトをまとめる方向であることを情報共有いただきました。

最後に木村氏は、市民社会との協議のあり方そのものに対する意見を寄せてくれるよう呼び掛け、さらにはADBの中心的取り組みがインフラ事業であり続けるであろうことを踏まえて、インフラ事業をより効果的、包摂的にするために必要な視点や取り組みについて市民社会からの積極的な意見や提言を歓迎すると発表を締めくくりました。

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続いて登壇したマックス・ローソン(オックスファムの格差に関する政策アドバイザー)からは、アジアにおける格差の傾向、格差への取り組みにおける税制と政府の役割、そして ADBへの提言について発表しました。

これまでのアジアにおける経済成長は、その恩恵が社会に幅広く享受されてきたことが一つの特徴でしたが、こうした傾向は近年崩れつつあり、各国における格差は拡大傾向にあります。

また、アジア諸国の場合、ブラジルやアルゼンチンなどの南米諸国と比較して、格差是正に寄与する政府の施策の影響が小さいことが指摘されました。その大きな要因として、政府の歳入に占める税収入が傾向として低いこと(ミャンマー:8.2%、バングラデシュ:10.5%、中国21.1%、ブラジル24.6%)が挙げられました。加え、教育・保健分野に充てられる国家予算の割合が低いことも要因として指摘されました。裏を返せば、格差への取り組みという観点からは、アジアの各国政府ができることはまだまだあるということです。

さらに、 ADBが果たすべき役割についての提言として次の4点の指摘がありました。

1. 格差への取り組みを2030年戦略の中心的柱として据えること
「包摂的な成長(inclusive growth)」では不十分。世界銀行は、下位40%の人々に焦点を当てること、「繁栄の共有(shared prosperity)」を掲げているが、ADBにはその先を目指すことが期待される。
2. 格差に関するよりよいデータの収集と分析
各国の市民にとって、自国の格差の水準が他国と比べてどのあたりにあるのか、政府が取りうる政策を見たときに、自国政府の政策が他国と比較してどのような内容かを理解するためのデータは、各国で変革を促す上で有用かつ重要な役割を果たすことになる。
3. 税収入の確保に務めること
資産への課税、間接税からではない税収入確保の施策の充実。租税回避への取り組み、不要な税優遇措置の廃止、税徴収の強化改善。
4. より革新的な公的支出
教育・保健分野への拡充や利用者負担の軽減もしくは除去。

その他のパネリストからは、それぞれの活動や専門の分野を踏まえて、格差への取り組みにおいて重視されるべき点が挙げられました。社会的起業家への支援の重要性、所得格差への取り組みや労働者の権利の保護・拡充の必要性、 ADBの情報開示や透明性確保の必要性など、幅広い視点からADBへの提言がなされました。

格差拡大が進んでいること、そしてそれが課題であることは、世界的に広く認識されてきたと言えます。しかし、格差減少へ向けての具体的な取り組み、政府・民間企業・国際機関などが果たすべき役割やその方法についてはまだまだ議論が始まったばかりです。 格差拡大は、経済成長をも阻害し、何より民主主義を脅かします。オックスファムは、今後もさまざまなステークホルダーとともに国内外における格差の課題について考え、積極的に取り組んでいきます。

活動:調査提言(アドボカシー)
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